電子契約に必要な要件と企業が検討すべきポイントとは?

電子契約

働き方改革の前提として、契約書を含むあらゆる文書の電子化が必須となり、その結果、電子契約が爆発的に普及し始めています。もっとも電子契約を行うためには一定の要件があり、企業側が検討するべきポイントもあります。今回はそれらを見ていくことにしましょう。

電子契約の要件

電子署名法

2000年に施行された電子署名法により、本人による電子署名を施した電子ファイル(電磁的記録)についての法的効果が定められました(電子署名法第3条)。

第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

以下の要件を満たす電子署名を付与された電子ファイルは、書面に押印または署名された契約書に同等の法的効力が生じることとなります(電子署名法第2条)。

本人性の証明—電子文書が署名者本人により作成されていることが証明できること

非改ざん性の証明—署名された時点から電子文書が改ざんされていないこと証明できること

電子帳簿保存法

税法上、契約書、注文書、領収書、見積書等の取引情報に係る書面は、7年間保存する義務があります(法人税法施行規則59条ほか)。

ただし、電子契約のように電子データで保存する場合、以下の要件を満たすことで、紙の契約書等の原本と同等に扱われ、長期保存にかかる負担が解消できます(電子帳簿保存法10条)。

真実性の確保—認定タイムスタンプまたは社内規程があること

関係書類の備付—マニュアルが備え付けられていること

検索性の確保—主要項目を範囲指定および組み合わせで検索できること

見読性の確保—納税地で画面とプリンターで契約内容が確認できること

企業が検討すべきポイント

①法律で書面が求められる契約類型が一部に存在する

契約方式自由の原則により、基本契約・秘密保持契約・売買契約・業務委託契約・請負契約・雇用契約など、ほとんどの契約において電子契約が利用可能となっています。

一方、電子契約が普及している中でも、消費者保護などを目的として、法律で書面(紙)による締結や交付が義務付けられているものも一部ですが存在します。

以下に書面が必要となる代表的な類型を紹介します。

定期借地契約(借地借家法22条)

定期建物賃貸借契約(借地借家法38条1項)

投資信託契約の約款(投資信託及び投資法人に関する法律5条)

訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引における書面交付義務(特定商品取引法4条etc)

このような契約を扱う場合、電子契約の導入の前に、顧問弁護士にも確認の上ご利用いただくことをおすすめします。

②受信者側(契約相手方)の理解

自社で導入できたとしても、電子契約の受信者側の理解も必要になります。相手が合意することで契約は締結されますので、受信者である相手が電子契約を拒んで従来の書面による契約を希望した場合には、相手に合わせなければならないケースも少なくありません。

また、導入する電子契約サービスによっては、相手にも同様の電子契約サービスを利用してもらう必要もあるため、相手に費用を負担させてしまうこともあります。「自分たちのために同じ電子契約を使ってください」と言ったところで、相手にメリットがなければ同じ電子契約サービスは利用してくれません。

これらの要件と注意点を守りさえすれば、電子契約はとても便利なものと言えるでしょう。