ECRSとは何か?

ECRSとは?

ECRSとは、業務改善を実視する上での、順番と視点を示したものである。

ECRSは、Eliminate(排除)、Combine(結合と分離)、Rearrange(入替えと代替)、Simplify(簡素化)の英語の頭文字を選択したものである。業務の改善においてECRSを適用すると、改善の効果が大きく、過剰や過小な改善も避けられ、さらに不要なトラブルも最小になることが知られている。

E:Eliminate
まず1つ目のEliminateでは、作業をなくせないか、やめられないか考えます。目的を再確認し、目的に対してあまり必要のない作業は排除します。コストや手間がほとんどかからないのがEliminateの特徴です。
C:Combine
2つ目のCombineでは、複数の作業をまとめて同時に行えないか考えます。作業を統合して行うことで、より効率的なプロセスができ、リードタイムの短縮につながるのです。Combineも比較的コストがかからない改善手法となっています。
R:Rearrange
3つ目のRearrangeでは、作業の順番を変更できないか考えます。工程の変更によってリードタイムの停滞時間が大幅に削れるケースもあります。ジョンソン法などが有名です。Rearrangeはある程度の変更を強いることになりますが、全体的に見れば小さなコストです。
S:Simplify
4つ目のSimplifyでは、もっと簡単な作業、単純な作業にできないか考えます。作業の一部を省略しても、生まれる成果は同じである場合があるので、その場合は積極的に単純化、簡潔化を狙いましょう。

Simplifyは前の3つに比べると作業そのものを変更していくので、多少のコストにはなりますが、リードタイムの短縮にとどまらないコストカットも期待できます。

ECRSは取り組むためのコストが低いものばかりなので、積極的に活用していきましょう。

ECRSと5Sの関係

5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の頭文字のSをとったものを言います。

  • 整理 不要なものを捨てること
  • 整頓 使いやすく並べて表示をすること
  • 清掃 きれいに掃除をしながら、あわせて点検すること
  • 清潔 きれいな状態を維持すること
  • しつけ きれいに使うように習慣づけること

一般的にECRSが企業レベルで取り組むものを指すのに対して5Sは個人レベルで取り組むものを指します。

では実際にEの部分である業務の削減について、トヨタの事例から学んでいきましょう。

作りすぎのムダ

作りすぎのムダというのは、必要以上のものを作ってしまい、非効率になってしまうことや、適切なタイミングで業務を行わないことにより、ものが余ってしまうことを指します。

例えば、ECRSのEの部分だけを議論するミーティングがあるとして、そのミーティングのための資料作るとします。その時、ECRSすべてに関する資料は必要ありません。今回のミーティングではEの部分だけの資料があれば良いのです。

また、セミナーなどを開催する際、具体的な集客人数を確定する前から資料を印刷してしまい、大幅に資料が余ってしまうケースもこの作りすぎのムダにあたります。しっかり適切な量の業務を見極めましょう。

手待ちのムダ

手待ちのムダというのは、ある業務を行っている際、何かしらの原因で次の仕事に進めず、一時的に何もやることが状態を指し、時間をムダにしてしまっている状態を指します。

例えば、上司に資料の確認をしてもらいたいのだが、上司の予定を確認しなかったため、上司の外回りが終わるまで2時間近く待つはめになってしまう。

このような手待ちのムダを解消するには、自分が着手したい業務の進捗をしっかりと逆算し、上司の予定も把握することで、時間のムダなく、資料を確認してもらう時間をあらかじめ把握しておくことが重要です。

運搬のムダ

運搬のムダとは、付加価値を生まない歩行やモノの運搬、情報の流れを指します。

例えば、あなたの会社のオフィスにおいて、コピー機はどこに配置されているでしょうか。コピー機は毎日多くの社員が使うものだと思います。

そのコピー機が、社員のデスクからとんでもなく離れていたら効率が悪く、ムダになります。小さなことかもしれませんが、塵も積もれば山となるのです。オフィスのレイアウトも、今一度見つめ直してみましょう。

加工のムダ

加工のムダとは、主要業務の完成度、質の高さとは全く関係のない不要な作業を指します。

例えば、プレゼンテーションのためのスライドや資料を作る際、ムダにデザインに時間をかけ、質ではなく、見た目に凝るといったケースが考えられます。確かに、ある程度のデザイン性は必要かもしれませんが、質がいまいちにも関わらず、デザインに時間を多く割くのは非常に効率が悪いです。

担当している業務において、何が一番重要なのかの優先順位をつけることが重要です。

在庫のムダ

在庫のムダとは、必要のない書類や用具がオフィスの棚にぎっしり詰められていたり、デスクの上に散乱している状態を指します。

特に、デスク周りは、もう使わなくなった書類がそのままといったケースが多いのではないでしょうか。働く環境をしっかりと整えることで生産性は飛躍的に上がります。まず、身の回りの必要のない書類を整理しましょう。

動作のムダ

動作のムダとは、付加価値を生まない身体的な動きを指します。

例えば、営業での外回りの際、3社の企業に訪問するとします。その時、3社とも遠い場所に位置していたら移動の時間、動きが全くのムダになります。

動作のムダをなくすためには、同じエリアにある3社を選ぶことで移動のムダが省けます。こうした少しの工夫が積み重なり、大きな成果へと繋がるのです。

マニュアル化や仕組み化をする際、システムでの管理をすることをお勧めします。紙媒体でマニュアルを管理することも可能ですが、マニュアルはアップデートしていくことが望ましいので、そうするとクラウド上でマニュアルを管理できるシステムの導入が理想的です。

中小企業にとって朗報なのが、2016年度の補正予算でできた、生産性向上投資に対し、国からの支援を受けられる制度の発足です。この制度により、IT投資コストの3分の2まで100万円を上限に国が補助してくれます。さらに、中小企業のIT投資をサポートするための補助金、助成金制度もあります。