コロナの影響で在宅勤務を認める会社や、フリーランスでもっぱら在宅勤務するヒトが増えている中、大企業で在宅勤務を止める動きもあります。
働き方のスタイルは、今後どうなっていくのでしょうか?
IBM、Yahooの在宅勤務廃止
THE WALL STREET JOURNALは2年ほど前、数十年にわたって在宅勤務を推進してきた米IBMが同制度の根本的な見直しを決め、数千人の従業員にオフィスで働くか退職するかの決断を迫っていると報道されたことは、まだ記憶に新しいです。
フルタイム雇用者の約25%がなんらかの形で在宅勤務していた米ヤフーも2013年、社員の在宅勤務を禁止し、オフィスへの出勤を義務付ける方針を明らかにしました。
チームワーク不足や節約失敗が原因か
在宅廃止に舵を切るのは、「チームワーク」や「一体感」「コミュニケーション」不足や、期待したオフィス・不動産コストの節約が実現しなかったためだと見られています。
ヤフーの場合、テレワーク禁止を発表した後にわかったことは、勤務実態やその管理がずさんであったことです。テレワークを利用していた社員が勤務時間中に副業していたり、自分の会社を立ち上げていたり、ということが明らかになりました。マネージャーが適切にテレワーカーを管理しておらず、野放し状態だったようです。「誰も見ていない場所で、会社の同じ成果を出す」ためには、適切なマネジメントが不可欠だということが判明しました。
IBMの場合、特定のオフィスに属さず、フルタイム在宅勤務をしていた社員が主流でした。それによりオフィスコストは削減できたが、チームワークやコミュニケーションが欠如したことのデメリットの方が大きいと考えたと思われます。米国は国内でもニューヨークとロサンゼルスだと3時間の時差があるほど国土が広く、そのため、共働き夫婦等が遠隔勤務を希望することが少なくなく、そのような状況の対応としてフルタイム在宅勤務やサテライトオフィスが発達していったのです。
グーグルはなぜ在宅勤務を取り入れないのか?
自宅で仕事をすることにより、家族との時間がより多くとれ、フレキシブルな働き方ができる在宅勤務。多くの企業が取り入れる中、これに従わない企業もあります。その代表がグーグルです。
グーグルは2018年、ニューヨーク市のランドマーク的ビルのチェルシーマーケットを、自社のワークスペースとして利用するため20億ドル以上で買収しました。ニューヨークにはすでに本社ビルがあり、かなりのオフィススペースを所有しているにも関わらず、その面積を広げています。グーグルは在宅勤務を禁止しており、社員は基本的にオフィスに通わなければなりません。
「グーグル・ドライブ」「グーグル・ハングアウト」等のテレワークに欠かせないサービスを提供する最先端の企業は、なぜこのような保守的な勤務形態を堅持しているのでしょうか?
それは「社員をグーグル以外の環境に置かないことで愛社精神を育み、会社のクリエイティビティや情報を守ること」だそうです。
在宅勤務とオフィスワークの生産性の違いがほとんどないことは、同社でも実証済みです。しかしそれを圧しても「社の守秘義務」や「社員を囲う」ことに重きを置くのは、「情報を扱うプロ」であるグーグルらしいやり方なのかもしれません。
一切会社に来ない“フル在宅勤務”の社員が直面する3つの壁
ある調査会社の調べによると、週に3、4日の在宅勤務をする社員が最もエンゲージメントが高く、毎日在宅、または毎日オフィスに出社するという働き方はエンゲージメントの度合いを低下させることを示していました。
同社はフル在宅勤務の社員のエンゲージメント低下の原因として、彼らが直面しがちな3つの壁を挙げ、上司がケアすべきことを示唆しています。日本企業にも参考になる内容です。
(1)上司が成果に気づかない、評価してくれない
部下が良い仕事をした時、それを認めて評価することは上司の重要な役目だ。同じオフィスにいれば、その機会は自然に生まれるが、フル在宅勤務の部下については、褒める機会がないどころか部下の成果に気づくことすら難しい場合があります。
忙しい上司はつい、コミュニケーションを必要最低限に絞ってしまいがち。だがフル在宅勤務の部下と信頼関係を築き、パフォーマンスを引き出すためには、彼らの行いを把握して適切なフィードバックをする必要があります。
それには、成果をシェアしてもらう機会を意図的に増やすことです。たとえば定期的なオンラインミーティングや週次報告メールで、「最近うまくいったこと」について報告してもらうようにすると良いでしょう。
(2)今後のキャリアの展望が見えない
フル在宅勤務の社員は、自分のキャリアプランをどう実現するかについて、上司と話し合う機会が少ない傾向にあります。この状況は、ただちに改善すべきです。「キャリアアップや成長の機会があるかどうか」は、退職を考える1番のきっかけになるからです。
特にフル在宅勤務の場合、自分の担当業務や所属部署以外の状況が見えづらいです。他の部署やポジションでどんな仕事が行われているのかについて分かりやすく情報提供をすれば、社内でのキャリアアップの可能性についてイメージしやすくなるでしょう。
(3)同僚とつながる機会がない
フル在宅勤務の社員は、他の社員と関わり合う機会が少なく、孤立していると感じることがあります。
これを解消する一つの方法は、グループウェアやチャットシステム、ビデオ会議などのテクノロジーをうまく利用することです。この時、特に気をつけなければいけないのは、チームの中でフル在宅勤務という雇用形態が少数派である場合です。。オンラインでのやり取りを例外や臨時的なものとして扱うのではなく、対面での会話やミーティングに代わる正式なものとして、真剣に取り組まなければならないでしょう。
いずれにしろ、共通しているのはコミュニケーションが万全でない点にです。上司がもっと在宅勤務社員の状況を正確に把握したり、同僚と直接的に触れ合う機会も増やしたりすれば、在宅勤務も当然ながらアリです。