ダブルワークのパターン
どんな組み合わせのダブルワークがあるの?
ひとことでダブルワークといっても、働き方の組み合わせはさまざまです。たとえば、次のような形態が想定できます。
①正社員としてフルタイムで働いて、夜または休日にパートで仕事をする
②正社員としてフルタイムで働いて、夜または休日に個人事業主として働く
③自営業をしているが、空いた時間をパートとして働いている
④2のパートを掛持ちして、曜日によって勤務先を変えている
⑤2つのパートを掛持ちして、昼と夜で勤務先を変えている
⑥2つのパートを掛持ちして、シフトをうまく組み合わせている
いろんなダブルワークがありますね~!
この他にも、派遣社員、契約社員、短時間正社員、アルバイトなどとの組み合わせも想定でき、実に多様です
ダブルワークの形態別による加入要件は?
それでは、ダブルワークの形態別の加入要件をみていきましょう。
①どちらの会社も加入要件を満たさない場合
どちらの会社も加入条件を満たしていない場合は、社会保険の加入対象にはなりません。二つの会社を合算して勤務時間を考えるという発想は今の規定にはないのです。
したがって、どちらの会社も加入条件を満たさない場合は、家族の扶養家族として登録されていなければ、国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。
②どちらか1つの会社が条件を満たす場合
どちらか1つの会社が加入条件を満たす場合は、その会社で加入手続をすることになります。
③両方の会社が条件を満たす場合
両方の会社が要件を満たす場合は、それぞれの会社で加入手続をする必要があります。その際は、要件を満たした日から10日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者選択・2以上事業所勤務届」を提出する必要があります。
これにより、該当する会社の賃金を合算して標準報酬月額が決められ、保険料は各社の賃金に応じて按分されることになります。
ダブルワークの仕事に関係する保険にはどんなものがあるか
雇用されて働く人に関係する保険には、大きく分けて「労働保険」と「社会保険」があります。
まず、「労働保険」について説明します。労働保険には「労災」と呼ばれることが多い「労働者災害補償保険」と「失業保険」と呼ばれることもある「雇用保険」があります。「労働者災害補償保険」は、労働者が仕事中や通勤中にケガや病気をした場合に補償されます。雇用されている人は、全員が労働者災害補償保険の被保険者になります。
「雇用保険」は、週に20時間以上勤務する場合は被保険者になります。様々な条件や手続きはありますが、仕事を辞めた場合には雇用保険から手当金が給付されます。また、資格取得などの勉強をする時に受給できる教育訓練給付金や介護休業給付金などもあります。
そして、「社会保険」には「厚生年金保険」と「健康保険」があります。「厚生年金保険」には「老齢」「障害」「遺族」の3種類の年金があり、保険料は賃金額によって決められて毎月の賃金から引かれています。「健康保険」も同様に保険料が引かれており、保険証があれば医療機関を受診した時の負担が1割から3割で済みます。
ケガや病気で仕事を長期間休む時の「傷病手当金」、出産で休んだ時の「出産手当金」などの給付もあります。厚生年金保険も健康保険も正社員や週20時間以上勤務する人などが加入することができ、保険料は事業所が半分出してくれることになっています。
ダブルワークで社会保険に加入した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?
まず厚生年金に加入することで、将来支給される年金が確実に増えます。専業主婦の場合は、夫が自営業か会社員かにかかわらず、支給される年金は基礎年金のみです。しかし厚生年金に加入することで、基礎年金に加えて、厚生年金が加入期間に応じて支給されます。
また健康保険にも加入することで、国民健康保険にはない傷病手当金や出産手当金が支給されることになります。病気、けが、出産で仕事を休まざるを得ない場合、傷病手当または出産手当金として、賃金の約3分の2相当額を受け取ることができるのです。
夫が自営業の場合であれば、妻も国民年金加入者ということになります。このため、現状でも月額約1万6千円の保険料を納めているのです。
パート勤めで厚生年金に加入した場合、保険料を考えただけでも、会社が半額負担してくれるのですから、それだけで8千円のプラスになります。
さらに20年勤めると、基礎年金に加えて月額9,700円が厚生年金として加わります。40年勤めた場合は、19,300円が加わるのです。
夫が会社員の場合はどうでしょうか。もしパート先から、あと1時間だけ勤務時間を増やせば、厚生年金に加入できると言われたら、どう判断したらいいのでしょうか。
現段階では、夫は第2号被保険者であり、妻は第3号被保険者(扶養家族)です。妻の保険料は支払われていませんから、厚生年金に加入すると保険料の負担が増えることになります。
もし厚生年金の加入要件が揃ったということになれば、年収が103万円を超えているので、所得税の対象にもなってきます。しかし税制上の配偶者控除枠が103万円から150万円に拡大されたこともあり、年収130万円くらいまでであれば、あまり所得税の負担も大きくありません。
ただし、年収130万円~150万円くらいになると、給料から天引きされる金額も増え、夫の方も扶養手当が支給されなくなりますから、家族単位で考えると、あまり収入が増えた実感を得ることができません。
このため、バートをして厚生年金に加入するのであれば、年収130万円程度を目途にするのが最も効率がよいといえます。
ダブルワークをするのであれば、所得税に関しては年収は合算して考える必要があります。年収が増えると、夫の方の基礎控除がなくなったり、扶養家族から外れたりと影響は少なからずあります。
夫の健康保険の扶養家族から外れた場合、ダブルワークをしている会社のどちらも加入要件を満たさないとなると、国民健康保険に加入しなくてはいけません。
一定の収入のある人の国民健康保険の掛け金は決して安くはありませんから、ダブルワークに際しては、単純に収入面だけを考えるのではなく、社会保険への加入を視野に入れながら働き方を決める必要があります。
つまり、ダブルワークで合わせて30時間働いているのであれば、それぞれ15時間づつ働くのではなく、従業員が501人以上の会社の勤務時間を20時間以上にするなどの工夫が必要です。